超保存領域をコードするT-UCRを介した大腸がん悪性化機構の解明

トップ記事超保存領域をコードするT-UCRを介した大腸がん悪性化機構の解明

平成28年度 若手研究者学長表彰 疯狂体育,疯狂体育app下载報告

報告者

大学院医歯薬学研究部 病態生理学分野 助教 桑野由紀

 

研究タイトル

超保存領域をコードするT-UCRを介した大腸がん悪性化機構の解明

 

研究経緯等

【研究の背景】

RNAはゲノムDNAの90%以上の領域から転写されますが、その過半数はタンパク質をコードしない非コードRNAであることが近年明らかになりました。しかしながら、その多くは機能が未知な「遺伝子のダークマター」であり、機能性RNAの研究は非常に新しく可能性が秘められた分野です。本研究では、高等生物のゲノムに200 bp以上連続して100%保存された超保存領域(ultraconserved region: UCR)より転写される、新規の機能性非コードRNA(Transcribed (T)-UCR)に着目しました。超保存領域は、マウス以上の哺乳類に進化の過程でトランスポゾンとして組み込まれ、ヒトゲノム上に481カ所存在します。興味深いことに、超保存領域の多くは選択的スプライシング調節因子をコードする遺伝子群(SRSFファミリー)に分布しており、進化の過程で、遺伝子の多様性や新たな恒常性維持機構の獲得に寄与したと考えられますが、その機能は未だ不明です。高等生物のみがコードするT-UCRの発現異常や蓄積は、がん化など細胞内恒常性の破綻の新たなリスクファクターとなる可能性があり、本疯狂体育,疯狂体育app下载はRNAを標的としたがんの新規治療薬への展開が期待されます。

 

【学術誌等への掲載状況】

  1. Kajita K, Kuwano Y, Satake Y, Kano S, Kurokawa K, Akaike Y, Masuda K, Nishida K, Rokutan K. Ultraconserved region-containing Transformer 2β4 controls senescence of colon cancer cells. Oncogenesis, 5:e213 (2016)
  2. Saijo S, Kuwano Y, Nishikawa T, Rokutan K, Nishida K. Serine/arginine-rich splicing factor 7 regulates p21-dependent growth arrest in colon cancer cells. J Med. Invest. 63(3-4):219-26 (2016)
  3. Kuwano Y, Nishida K, Kajita K, Satake Y, Akaike Y, Fujita F, Kano S, Masuda K, Rokutan K. Transformer 2β and miR-204 regulate apoptosis through competitive binding to 3' UTR of BCL2 mRNA. Cell Death Diffe., 22(5):815-25 (2015)

 

研究概要

本研究では、マウスからヒトまでに100%保存されたゲノム領域(超保存領域)より転写された機能性RNA、T-UCRの生理的意義の解明を目指し、選択的スプライシング因子Transformer 2-beta (TRA2B)遺伝子より生成されるTRA2β4 RNAの機能解析を行いました。TRA2β4はエクソン2に超保存領域がコードされていますが、中途ストップコドンを含むため正規Tra2βタンパク質に翻訳されず、RNAの形で核に留まることを見出しました(図1)。TRA2β4は大腸がん組織に高発現しており(図2)、大腸がん細胞株HCT116においてsiRNAを用いて発現を減少させると、細胞増殖の低下及び細胞老化の誘導が確認されました(図3)。分子メカニズムとして、① TRA2β4はエクソン2の二次構造を介して転写因子Sp1に結合すること、② Sp1のデコイとして、細胞老化調節因子p21 (CDKN1A遺伝子)のプロモーターへの結合を阻害すること、を見出しました。これらの結果より、大腸がんで高発現するTRA2β4はp21を減少させ、細胞老化を低下させ細胞増殖を亢進させる可能性が示唆されました。

 

IMG_1.png

 

IMG_2.png

IMG_3.png

 
今後の展望(研究者からのコメント)

近年、マイクロRNAをはじめとする機能性RNAの発現異常が引き起こす"RNA疾患"が注目されていますが、がん進展における超保存領域の関与は未だほとんど明らかになっていません。今後は、癌に特異的に認められるT-UCRのスクリーニング及び新しい癌バイオマーカーとしての基盤技術の開発、さらにT-UCR RNAを標的とした核酸製剤への展開を目指しています。

カテゴリー

閲覧履歴