Epstein-Barrウイルス関連胃がん患者では、循環血漿中のDNAを用いることにより低侵襲でリアルタイムに胃がんの診断や経過観察が可能である

トップ記事Epstein-Barrウイルス関連胃がん患者では、循環血漿中のDNAを用いることにより低侵襲でリアルタイムに胃がんの診断や経過観察が可能である
報告者

大学院医歯薬学研究部 人類遺伝学分野 准教授 増田清士

 

研究タイトル

Epstein-Barrウイルス関連胃がん患者では、循環血漿中のDNAを用いることにより低侵襲でリアルタイムに胃がんの診断や経過観察が可能である

 

研究経緯等

【研究グループ】

  • 徳島大学大学院医歯薬学研究部 人類遺伝学分野 井本逸勢
  • 京都府立医科大学消化器外科 准教授 市川大輔

【研究経緯】

Epstein-Barrウイルス(EBV)感染は胃がんの約一割の症例で認められます。そのようなEBV関連胃がんでは、現在開発中のものを含めていくつかの分子標的薬が効果を示す可能性のある遺伝子の変化が高率に検出されることから、重要な分子マーカーになると考えられます。現在は手術時に摘出されたがん組織を用いて、EBV感染の有無が診断できますが、がんの治療中や再発時にがん組織をとることは侵襲が大きいために実際に検査が行われることは稀です。今回、循環血液中の遊離DNAをリアルタイムPCR法を用いて解析するリキッドバイオプシー(液体生検)技術により、がん組織を用いることなく、胃がんのEBV感染を低侵襲で検出する方法を開発しました。

【学術誌等への掲載状況】

Clinical utility of circulating cell-free Epstein–Barr virus DNA in patients with gastric cancer. Shoda K, Ichikawa D, Fujita Y, Masuda K, Hiramoto H, Hamada J, Arita T, Konishi H, Kosuga T, Komatsu S, Shinozaki A, Okamoto K, Imoto I, Otsuji E. Oncotarget 2017 Feb 13.

 

研究概要

【研究の背景】

これまで胃がんは病因や組織構造に多様性があることが知られていましたが、近年の解析技術の進歩によって、がんゲノムに認められる特徴に着目したグループ分けが効果的な治療法の選択につながることが明らかになってきました。Epstein-Barrウイルス(EBV)感染は、胃がん全体の約一割の症例に認められ(EBV関連胃がん)、他のタイプに比べて特定の遺伝子が高頻度に変異していることや、がん細胞が免疫力を抑え込む仕組みの一つが活性化していることが報告され、今後これらの変化に対する分子標的治療が開発されたり有効性が示されれば、重要な分子マーカーになります。EBV関連胃がんは、がん細胞内にEBV感染が認められるので、現在は手術時に摘出されたがん組織を用いて、その陽性?陰性が診断されています。一方、がんの治療中や再発時には侵襲が大きいために検査を行うことは困難で、治療の効果を定量的に評価したり再発時に治療法を選択したりするための情報を得ることができません。

【結果の概要】

今回開発した、循環血漿中に流れるがん細胞内EBV由来のDNAを高精度に検出する方法は、検体採取が採血のみですむことから低侵襲で何度でも行うことができます。同グループでは、これまで同様の方法を用いたリキッドバイオプシー技術により、胃がんにおける分子標的治療薬の標的であるHER2遺伝子増幅を、がん組織を用いることなく高感度で低侵襲に検出できる方法を発表してきました。今回血中でEBV由来DNAを検出することにより、胃がんの治療戦略に有用な可能性のある新たなツールが加わることになります。

今回の研究によって、手法の確立以外にも、解析された症例は少ないものの臨床的に重要な知見が得られました。例えば、手術前に血液でEBV感染が検出されていた症例では、EBVのDNA量が腫瘍の大きさと相関したことから(図1)、EBV関連胃がんの治療後にEBVのDNA量の変化を見ることで治療効果が判定できる可能性があります。また、手術でがんを取り除き一旦EBVのDNAが消失した後も経過を追っていると、他の検査(画像や腫瘍マーカー)で再発が発見される前に血中でEBVの再出現が検出されたことから(図2)、再発の早期発見マーカーに使える可能性があります。

 

IMG_1.png

 

IMG_2.png

 

 

今後の展望(研究者からのコメント)

血液のみでEBV関連胃がんの診断ができることで、治療効果の予測?判定や再発の監視が非侵襲的にリアルタイムで行えることになり、今後の胃がん診療に有用なツールとなる可能性があります。今後研究グループでは、症例を増やして臨床的な有用性を確認するとともに、検査の実用化のためのさらなる高精度化を図るべく技術開発を進めていきます。

 

その他参考となる事項

この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム網羅的解析情報を基盤とするオーダーメイドがん医療実現のための開発研究事業「ゲノム網羅的解析情報を基盤とするオーダーメイドがん医療実現のための開発研究」、文部科学省の研究補助金によって行われました。

カテゴリー

閲覧履歴